
ポスターは、街の中で一瞬目に入るもの。
誰かの視線を止めるために、文字や写真、色、形が組み合わされる。
今回、ギンザ・グラフィック・ギャラリー (ggg)で開催されている「ダフィ・クーネ:ポスターを構築する ―形をつくる、版をつくる、表現をつくる―」を見てきました。
展示されていたのは、スイスを拠点に活動するグラフィックデザイナー、ダフィ・クーネのポスター作品。
一見するとシンプルに見えるものでも、近づいて見ると、形や文字、印刷による質感など、細かな要素が組み合わされていることが分かります。
今回は、展示を実際に見て感じたことを中心に、ダフィ・クーネのポスターの魅力を紹介します。
「ポスター」をどうつくるのか

今回の展示で印象的だったのは、ポスターを一枚の完成されたグラフィックとして見るのではなく、「つくる」という工程そのものを感じられることでした。
タイトルにもあるように、
「形をつくる」
「版をつくる」
「表現をつくる」
というプロセスが、作品の中に残されています。
ポスターというと、パソコンの画面上で文字や写真を配置して完成させるものを想像しがちです。
しかし、実際の作品を見ると、印刷という物理的な行為によって生まれるズレや重なり、質感そのものが表現になっていることに気づきます。
画面の中だけでは完結しない。
そこに、印刷物としての面白さがあります。
シンプルなのに、目に残る

ダフィ・クーネの作品を見ていて感じたのが、情報量が多くないのに強く印象に残るということ。
たくさんの色や写真、装飾を使って目立たせるのではなく、形や文字の配置、余白などを使って視線をつくっています。
特に面白かったのが、文字そのものを「情報」としてだけではなく、ひとつの「形」として扱っているところ。
文字を読む前に、まずグラフィックとして目に入ってくる。
その感覚は、ファッションにも少し似ています。
服も、ブランド名やアイテムの説明を読む前に、シルエットや色、素材感によって印象が決まります。
「版」が表現になる

今回の展示を見て、改めて面白いと思ったのが「版」です。
版をつくり、インクを重ね、紙に刷る。
その工程によって、同じデザインでも微妙な表情が生まれる。
デジタルでは、基本的に同じデータを何度でも正確に再現できます。
一方で印刷には、物理的な工程がある。
その「完全にはコントロールしきれない部分」が、作品の魅力にもなっています。
少しのズレや重なり、インクの濃淡。
そういったものが、単なる印刷上の誤差ではなく、作品そのものの表情になっている。
これは、現代のデザインを考えるうえでも面白いポイントだと思いました。
ファッションにも通じる「構築」

展示を見ながら、個人的に強く感じたのが、ポスターとファッションには意外と共通点があるということ。
どちらも、いくつかの要素を組み合わせてひとつの表現をつくります。
服であれば、
シルエット。
素材。
色。
ディテール。
ロゴ。
そしてスタイリング。
ポスターであれば、
文字。
形。
色。
紙。
印刷。
配置。
それぞれの要素をどう組み合わせるかによって、最終的な印象が変わります。
だからこそ、今回の展示はグラフィックデザインを専門にしていない人が見ても面白い。
「デザインを学ぶ」というより、ものを組み合わせて表現をつくる感覚を学ぶことができる展示だと感じました。
余白があるから、形が見える

もうひとつ印象に残ったのが「余白」です。
何かを足すことで表現するのではなく、あえて何も置かない。
その余白によって、文字や形が強く見える。
これはファッションでも同じです。
アイテムをたくさん重ねるのではなく、ひとつのアイテムを主役にする。
色をたくさん使うのではなく、全体の色数を絞る。
シンプルな服装なのに、なぜかかっこいい。
そういうスタイルには、実は「何を足さないか」という考え方があります。
今回のポスターを見ていて、その感覚を改めて考えさせられました。
デジタルの時代だからこそ、印刷物を見る

現在は、SNSをスクロールすれば毎日大量のビジュアルを見ることができます。
スマートフォンの画面の中では、画像はどこまでも均一です。
一方で、紙に印刷されたポスターには、画面にはない物理的な存在感があります。
紙の質感。
インクの重なり。
細かな凹凸。
光の当たり方。
そして、実際のサイズ。
写真で見るだけでは分からない部分が、実物にはあります。
今回、実際に展示を見ることで、「デザインは画面の中だけにあるものではない」ということを改めて感じました。
EDITOR’S NOTE

普段、ファッションの写真やグラフィックを見る機会は多いですが、今回の展示では「どうやってこの表現が生まれたのか」という部分に目を向けることができました。
完成した一枚を見るだけではなく、形をつくり、版をつくり、印刷する。
その工程そのものが表現につながっている。
特に印象的だったのは、シンプルな構成なのに、強く目に残る作品が多かったこと。
何かをつくるとき、つい要素を足したくなります。
でも、必要なものだけを残して、余白をつくる。
その引き算によって、逆に表現が強くなることもある。
ファッションでも、グラフィックでも、写真でも。
「何を足すか」だけではなく、「何を残して、何を削るか」。
今回の展示は、そんなことを考えるきっかけになりました。
デザインやファッションが好きな人はもちろん、普段あまりポスターを見る機会がない人にも、ぜひ実物を見てほしい展示です。
